歳を重ねるとともに誰かの名前を忘れたり、物覚えが悪くなったりします。脳の老化によって引き起こされる「物忘れ」しかし、認知症はなんらかの病気によって脳の神経細胞が壊された時の症状や状態です。ここでは、認知症の基礎知識や家族への配慮。患者にできる取り組みについて紹介します。
認知症とは
認知症とは病気の名前ではなく、記憶したり判断したりする力の症状や状態を指します。老化によるもの忘れとは別もので、認知症の主な違いとしては以下の点です。
原因
老化によるもの忘れは脳の生理的な老化によるものですが、認知症の場合は脳の神経細胞の崩れです。
忘れる範囲
もの忘れは記憶の1部にとどまり、ヒントがあれば思い出せる状態ですが、認知症の場合は体験した記憶を丸ごと忘れてしまいます。
症状の変化
老化によるもの忘れは判断力の低下はありませんが、認知症の場合日常生活に支障をきたすほどの判断力の低下があります。また、忘れたことへの自覚がなく、老化のもの忘れのように「忘れっぽいな」という感覚もありません。認知症にはいろいろな種類があります。主な認証の種類としては大きく分けて3つ。「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が3大認知症と呼ばれています。中でも最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。症状は比較的穏やかに進行し、徐々に記憶障害が起こり日付や曜日がわからなくなっていきます。
家族に迷惑をかけないような暮らし方
アルツハイマー型の認知症は治療によっての改善は困難ですが、病気の進行を遅らせ家族の介護負担を軽減できます。患者本人とその家族が支え合い、その人らしく過ごすことが治療の中心なります。治療法としては、薬を使う治療「薬物治療」と薬を使わない「非薬物治療法」の2つがあります。
患者ができる取り組み
薬による治療
薬を使用する治療は2種類の薬があります。「コリンエステラーゼ阻害薬」と「NMDA受容体抗薬」です。それぞれアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる働きがあり、脳の中の情報を伝える神経細胞に作用します。
薬以外の治療
認知症と診断されていても本人ができることや役割や活躍の場を作れます。治療方法には、書き取りドリルや認知リハビリテーション以外にも、音楽を聴いたり陶芸を楽しんだりなど、家族以外の人たちと交流の深まる将棋や麻雀などのボードゲームが脳の活性化につながります。家族や周囲の対応によって、患者本人の行動や心理状態が改善し、皆で前向きに日常生活を送る治療です。
認知症になった人のエピソード
ここでは認知症の母とそのご家族のエピソードを紹介します。78歳で認知症と診断されたお母様は認知症の進行が進むにつれて、同じ単語を繰り返したり食事を口に詰め込み過ぎたりという行動が続くようになりました。認知症専門の病院で1年の入院を経て、状態が落ち着いたので退院を決意。車イスの生活になったこともあり老人ホームへの見学へ行き、お母さんらしく過ごせるようなサービスが可能かの相談をしました。家族の介護の軽減と共に「患者としてではなく一人の人として生活ができるよう」に考える家族。認知症と診断された後も前向きな過ごし方ができます。その後は、お母さまのペースで楽しみながら、ホームでできたお友達と楽しい生活を過ごしたエピソードでした。